ないなりに、ないなる。

物を捨てきれないなりにミニマリスト目指す。(https://seminimalist.info/)のサブブログですよ。

マウンティングのために、ミニマリストを名乗ろう。


たとえば、バックパックひとつで生活してますというミニマリストのかたがいるとします。そのかたのブログを拝見したりします。僕は思うわけです。はて、冷蔵庫と洗濯機を格納できるサイズのバックパックとはいかほどの巨大さだろうかと。

そのかたのブログには、天井高くそびえるファミリーサイズの冷蔵庫と、乾燥機つきの50Lは入りそうなしっかりした洗濯機が、インスタ映えされるちょっと光源を加工されたセピアな写真にしっかり写って掲載されていたりするわけです。

つまり、そのかたは自分のアイテムを数える時に、無意識的に、あるいは意図的に家電製品を除外しているわけですね。いいと思います。ただ、「バックパックひとつで生活しているミニマリストです。ただし、家電はたくさん持ってます!」とは絶対言わないわけです。自著を出されているのだとしたら、自著にもそんな文言は登場しません。編集が多分止めます。そこをバラしてしまうと、マウンティングできないからです。

ミニマリストは、自分がミニマリストだとアピールしたいわけです。全てではないですが、観測される必然性がないのに観測数が多い事象には理由がつきまといます。

アピールするためには、都合の悪い事実を見せてはいけないわけです。たくさんの家電を所有しているのは事実だし、除外ルールが明確ならそれを明らかにするのは、自己のミニマリスト定義をはっきりさせるうえでも有用です。でも、そういうことをしてはいけないわけです。何故なら、それをすると非ミニマリストのかたがたに対して、ミニマリストでござい、どうだすごいだろーというマウンティングができなくなるからです。

何故これが大事かというと、非ミニマリストに対してマウンティングすることは、そういうミニマリストのかたにとって、ミニマリズムを邁進するための強いモチベーションになっているからです。

ミニマリスト道に入った我々の多くは、もとをたどれば、大抵は、ファッションとか教養とかつまらない世間体とか狭いコミュニティとかの中でマウンティングすることでアイデンティティを保ってきた元マキシマリストです。なので、我々は、ミニマリスト道に目覚めたら、今度はミニマリストという概念を使って、一生懸命マウンティングできるよう立ち回るわけです。

 

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という話をしたうえで。

それって、すごくいいと思います。

そう。この記事は、「あーあ、そういうミニマリストって嫌だよね」という記事ではないのです。むしろ、それもアリだなと思ったという話をしたいです。

何故なら、そのマウンティングによって、そのひとのミニマリズムが加速するのであれば、そのひとは目的を果たしているわけです。結果を出す行動には価値があります。目的を果たすためのマウンティングという手段は大いにアリです。

しいていえば、周囲が多少の迷惑を被る点ですが、こういうかたはマキシマリスト時代も別の手段でマウンティング行為を繰り返してきているわけで、それがミニマリストという分野で起こるようになっただけといえます。そのかたは、ミニマリストブログを始めなかったとしても、きっと別ジャンルの何かのブログで元気にドヤっていたことでしょう。

つまり、周囲を巻き込む迷惑さの総量が変わっているわけではないのです。良くはなっていないけれど、悪くもなっていない。であれば、マウンティングする分野が何であろうと同じことです。本人の目的に貢献できている分まだマシといえるのです。

 

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ただ、ひとつ注意なのは、マウンティング前提のミニマリズムを邁進したために、今度は都合の悪いことを隠す方がメインになっちゃう本末転倒だということです。

なので、他人に見せる自分は甘々にする一方で、自分と向き合う時間はシビアな方がいいのかなと思います。つまり「バックパックひとつ」ではなく「バックパックひとつとたくさんの家電」に向き合う時間です。

そうして自分の所有物とシビアに向き合っていると、新たな捨てが捗るシーンがあるかもしれません。もし首尾よく手放すことができれば、その領域はもう隠さなくていいわけです。それは、とても健全なことだと思います。大手を振って「持っていない」と言うことができ、その領域においてもマウンティングを加速させることができるわけです。

モチベーションを加速させる他人用のゆるゆる定義と、自己と見つめ合うシビアな定義を両軸で回せば、いい具合に止揚を生んでいくことができるんじゃないかと思います。

 

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最後に、冒頭の「バックパックひとつとたくさんの家電」を持っているミニマリストは多分実在しません。僕の創作です(いたら、すみません。あなたのことではないです)。ただ、僕の創作だとしても、ドキッとした人はいたんじゃないでしょうか。僕もたまにドキッとします。あ、自分、今マウンティングしてる?というかんじです。ナカーマ。

ただ、かっこわるい自分の性根を直すのはなかなかできませんが、それを最大限利用してなるべくいい方向に持っていくことはできると思うんです。僕は僕とつきあっていくしかないし、あなたはあなたとつきあっていくしかないし、手持ちの手札で勝負するしかないのなら、その中での最適解を探しましょう。人生を楽しく過ごすコツのひとつだと思っています。

ではでは。